高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、社会全体で注目を集めている「免許返納」の問題。
特に70代以上の親を持つ世代にとって、これは避けて通れないテーマです。
親の安全を考えれば返納を促したい一方で、生活の不便さや親のプライドを思うと、なかなか切り出せない─。
そんな“子世代の本音”が浮き彫りになる調査結果が発表されました。
この記事では、「高齢親の運転に不安を感じる子世代の実態」と「返納をめぐる言えない理由」を詳しく見ていきます。
高齢者の免許返納は「家族の問題」から「社会の課題」へ

高齢ドライバーによる事故のニュースは後を絶ちません。
少子高齢化が進む日本では、免許返納は個人の判断だけでなく、地域全体の安全と高齢者の生活の質に関わる重要なテーマです。
「親の安全を守りたい」
「でも、車を手放したら生活できないのでは……」
そんな葛藤を抱える子世代が増えています。
今回、株式会社トータスが運営する「tortoise」が実施した調査によると、70代以上の親を持つ40〜50代の多くが“免許返納”に複雑な感情を抱えていることがわかりました。
70代以上の親の半数以上が「いまも運転を続けている」
調査でまず注目されたのは、「親の運転状況」に関するデータです。
- 日常的に運転している:35.7%
- 時々運転している:14.5%
- すでに免許を返納した:27.2%
- 元々免許を持っていない:16.1%
この結果から、70代以上の親の約半数(50%超)が現在も自動車を運転している実態が明らかになりました。
一方で、すでに返納した人も約3割にのぼり、「運転を続ける派」と「返納した派」に分かれる傾向が見られます。
親の運転に「不安を感じている」子世代は7割
親が運転を続けている家庭の約7割(72.4%)が、「不安を感じる」と回答しました。
- 「やや不安を感じる」:53.5%
- 「非常に不安を感じる」:18.9%
不安の理由としては、
「反応が遅くなっている気がする」「運転中にヒヤッとすることがあった」「夜道での視力低下が心配」などが挙げられています。
一方で、「あまり不安を感じない」と答えた人も2割おり、運転歴や生活環境によって不安の度合いが異なることも分かります。
約6割が「親と免許返納について話したことがない」
興味深いのは、親の運転に不安を感じていても、実際に話し合ったことがない人が58.6%もいるという事実です。
多くの人が問題意識を持ちながらも、「どう切り出せばいいかわからない」「怒られるのが怖い」など、話題にしづらい心理が働いているようです。
この結果から、“気づいているのに言い出せない”家族関係の現実が浮き彫りになりました。
言い出せない理由は「生活の不安」と「親のプライド」
親と免許返納について話し合えていない人に、その理由を尋ねた結果がこちらです。
- 特にない:33.3%
- 免許返納後の生活イメージが湧かない:31.8%
- 親のプライドや自尊心が気になる:20.5%
この結果から、返納を阻む要因は環境的な問題(生活の不便さ)と心理的な問題(プライド)の2つがあることがわかります。
特に地方では、公共交通の便が悪く、車がなければ病院やスーパーに行けないケースも多いため、「返納後の生活」を現実的にイメージできないのです。
また、長年ハンドルを握ってきた高齢者にとって、免許証は“自立の証”でもあります。
「まだ大丈夫」「運転をやめたら終わり」と感じる人も少なくありません。
約7割が「具体的な行動を取れていない」
親の免許返納に向けて具体的な行動をしていない人は70.9%にものぼりました。
理由としては、
「どう説得すればいいかわからない」「親が拒否する」「話題を出すと気まずくなる」などが挙げられています。
実際に「話し合い・説得」をしている人は13.8%、「運転状況をチェックして判断材料を提供している」と答えた人は10.5%にとどまりました。
つまり、多くの家庭で“問題を認識していながらも先送りにしている”のが現状です。
免許返納後に最も不安なのは「移動手段の確保」
親が免許を返納した場合の不安点を尋ねたところ、46.6%が「移動手段の確保」と回答。
次いで、
- 親の活動意欲の低下:18.6%
- 親の生活の質の低下:16.2%
車がないことで、病院・買い物・趣味などの外出機会が減るのではないかと懸念する声が目立ちました。
特に地方都市や郊外では、代替交通手段が少ないことが返納の最大の壁になっています。
子世代の本音:「安全よりも孤立が怖い」
調査から浮かび上がるのは、「安全のために返納させたい」という思いと、「車を失って孤立してしまうのでは」という不安の狭間で揺れる子世代の姿です。
親の運転に不安を感じつつも、
「返納後の生活を支える自信がない」
「移動手段を確保できない」
といった切実な理由が、決断を先送りにしているのです。
免許返納は単なる“安全対策”ではなく、家族の生活設計全体を見直すきっかけでもあります。
解決のカギは「家族での話し合い」と「地域の支援」
親世代が安心して車を手放すためには、まず家族でオープンに話し合うことが欠かせません。
加えて、自治体や地域の高齢者向け交通サービス(コミュニティバス・乗り合いタクシーなど)を活用するのも有効です。
また、最近では、免許返納者向けの買い物支援アプリや宅配サービスも充実しており、工夫次第で生活の不便を最小限に抑えることができます。
まとめ
- 70代以上の親の約半数が運転を続けている
- 7割が不安を感じながらも、6割が話し合えていない
- 話し合いを妨げるのは、生活不安と親のプライド
- 免許返納後の最大の課題は移動手段の確保
高齢親の免許返納は、家族にとって“感情”と“現実”が交錯する難しいテーマです。
だからこそ、「運転をやめさせる」ではなく、「安心してやめられる環境を整える」ことが大切。
家族で支え合いながら、親の尊厳と安全を両立させる道を探っていくことが求められています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
